ダン・ブラウン解析
教養と知識が織りなす大胆不敵な世界
 教鞭をとっていた母校で、生徒が出した不用意なEメールがきっかけとなり、シークレット・サービスが訪ねてきた事件を基にアイデアを膨らませた最初の小説『パズル・パレス』を書き上げるも、売れ行きはいまいち。さらに、一年の下調べののち満を持して上梓した『天使と悪魔』や変化を求めて新たなエージェントと組んだ『デセプション・ポイント』もセールスは芳しいものとはいえず、売り上げ部数はベストセラーとは程遠い数字に留まった。
 しかし、瀬戸際に立たされたダン・ブラウンが、背水の陣で書き上げた第4長編の『ダ・ヴィンチ・コード』は、発売から10週間のうちに全米で100万部というセールスを叩き出した。
まさに作家の仕事こそが自分の居場所であると信じるダン・ブラウンだから成し遂げた快挙といっていいだろう。

ダン・ブラウン作品の魅力
『ダ・ヴィンチ・コード』をはじめとする彼の作品の数々には、ダン・ブラウン的としかいいようのない独特の面白さがあることに異論はないだろう。その面白さとは、いったい何なのか?
 ひとつには、他の作家には真似のできない大胆な題材の選び方。反物質のようなトンデモと紙一重のガジェットがいきなり登場したり、教会関係者から非難を浴びるほどのキリスト教の扱いなど、諸作をめぐっての世間の反応は、つねに喧しい。それもこれも、題材の特異性とその掟破りの料理法ゆえだが、敢えて「事実に基づく」とか「現実にある」という言葉を連ねて、読む者を煽るあたりは、相当の確信犯といっていいだろう。
 次に、情報小説として半端でない読みごたえがある。その情報量の多さは、いまやエンタテインメント文学の世界では右に出るものなしといっても過言ではない。

双六を彷彿とさせるゲーム性
 そしてしめくくりは、そのゲーム性である。彷彿とさせるのは、
貴族世界の遊戯が子どものものとなったあの遊び

ロバート・ラングドン解析 壮大なスケールで描かれるラングドン冒険譚
快進撃を続けるラングドン・シリーズ
 ロバート・ラングドンが読者の前に初めて登場したのは、2000年に刊行された『天使と悪魔』だったが、実はこのとき作者はシリーズ化を意図していたわけではなかった。
 ターニング・ポイントとなった作品は、いうまでもなく2003年の『ダ・ヴィンチ・コード』だが、この作家としての勝負作の主役を誰にするかを、散々悩んだという。結果として、『天使と悪魔』のハーヴァード大学教授ラングドンに白羽の矢が立ったが、その理由は、彼の職業や専門分野なら世界中のどこに現われても不思議はないし、どんな物語にも適応できそうだったからだとか。興味の対象やものの考え方など、作者の分身としてのシンクロ度の高さも、決め手となったそうだ。
 その後、ラングドン教授は『ロスト・シンボル』『インフェルノ』と大活躍を続けているが、聞くところによればダン・ブラウンはシリーズの長期的な構想を練っていて、プロットやあらすじだけでも、すでに12編分のストックがあるという。「書ききれないかもしれない」などと作者の弱音も聞こえてきているが、読者の楽しみはまだまだ続きそうだ。

著者紹介 Dan Brown (ダン・ブラウン)1964年、米ニューハンプシャー生まれ。アマースト大学を卒業後、英語教師から作家へ転身。2003年3月『ダ・ヴィンチ・コード』を刊行。無名の作家ながら、1週目からベストセラー・ランキング1位を獲得、社会現象といえるほどの驚異的な売れ行きとなる。2000年に刊行したシリーズ第一作である『天使と悪魔』も同時に売れ始め、一躍ベストセラー作家の仲間入りを果たす。父は哲学者、母は宗教音楽家、そして妻は美術史研究者であり画家でもある。他の著書に『デセプション・ポイント』『パズル・パレス』『ロスト・シンボル』。『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』は監督:ロン・ハワード、主演:トム・ハンクスで映画化され、大ヒットを記録している。本作も同タッグにより、2015年12月18日の全米公開を目指し始動した、と現地で報道されている。

『天使と悪魔』『ダ・ヴィンチ・コード』は監督:ロン・ハワード、主演:トム・ハンクスで映画化され、大ヒットを記録している。本作は同タッグにより、2015年12月18日の全米公開を目指し、始動した。